INTERVIEW

“なりたいじぶん”を育む大学に

節目を迎え、さらなる成熟に向かう明海大学。大学が描くビジョンをトップに聞いた。

ーー明海大学は2020年に50周年を迎えましたが、この50年という歳月をどのようにお考えですか?
宮田 歯学部をもつ大学には100年以上の歴史ある伝統校もありますが、本学と同様に1970年代に開学した大学が多いのも特徴と言えます。創立50年を迎えた今年、あらためて感じるのは50年という歳月のなかで明海大学を巣立った方々が築き上げてきた層が、確かな厚みを生んでいることです。つまり、創立間もない頃に歯学部を卒業された方は、永い間の社会貢献により歯科界において要職を務めている方は少なくありません。そう、50年の歳月は歯科界において若手からベテランまでの幅広い明海大学卒
業生の層を作り上げたのです。言い換えれば、現役で活躍するあらゆる世代に明海大卒業生がいるというわけです。

ーー卒業生の層に厚みが生まれることで、具体的にはどのような効果があるのでしょうか?
宮田 歯科医療の世界に踏み出した方、中堅として活躍する方、歯科界を牽引する方といった具合にさまざまな世代・ポジションに同窓生がいることで、助け合いや意見交換がスムーズになっていると思います。また、大学にとっても、卒業生による現場へのフィードバックは欠かすことができません。歯科医学においては今日学んだことが、明日には古いものになってしまうほどに技術革新が急速です。歯科医学の現場で最先端を走る幅広い歯科医師を卒業生にもっていることが、大学の強みにもなるのです。

ーー浦安キャンパスについてはいかがお考えでしょうか?
宮田 1988年に開設した浦安キャンパスにおいても、最初の卒業生は50歳を迎えています。期せずして50周年を迎える本学と同じ歳月を生きた浦安キャンパスの卒業生は、仕事でも一定のポジションを得ていたり、経営を担っていたりするケースが多いのです。また、子育てがひと段落し、自分のための時間を持ちつつあると思います。がむしゃらに走り続けてきたステージから、自分なりのペースで想いを実現するステージに移行する節目を迎えていると思います。

ーーそうした50年の歳月を経て、大学はどのような存在であるべきとお考えですか?
宮田 これまでは新設大学として成長を遂げてきましたが、50年を迎えた本学は壮年期に入ります。新たなステージへ第一歩を踏み出すのです。

ーー新たな門出というタイミングでのコロナ禍。
どのように影響がありましたか?
宮田 当然のことながら、学生がキャンパスに来ることができず、対面での授業ができないことは歯がゆいものがありました。しかし、早期にオンラインシステムを導入し、環境と教材を整え、ブラッシュアップしてきたことは、アフターコロナを考えても新しい教育手法に取り組む機会になったと考えています。そして、コロナ禍においては、働き方や活動の仕方が大きくシフトしました。ただ会社にいるという時代ではなくなったのです。どこにいるか、ではなく、何をしているかが問われる時代が到来しました。社会から求められる学生像にも変化があるでしょう。そうしたニーズに寄り添える大学でありたいと思います。

ーー社会が求める新たな学生像とはどのようなものでしょうか?
宮田 目まぐるしい速度で変化する時代に対応できる能力をもった人材です。ホスピタリティ・ツーリズム学部を例に挙げるならば、語学力があるだけではなく、留学の経験による多様性への理解力や、マネジメント能力も求められます。大学としては、企業とのコミュニケーションを緊密なものとし、企業が求める人材をオーダーメイドで育んでいくような教育を取り入れていくべきであると考えています。一方で、学生が社会で活躍できる環境を整えることも大学の役目だと考えます。浦安キャンパスに新設した保健医療学部口腔保健学科は、東日本の私立大学で初となる4年制大学での歯科衛生士養成課程です。一般的に3年間で社会にでる歯科衛生士とは異なる、4年間の教育を受けたからこそ、他の医療職種との連携協調を主体的に図ることができ、良好な口腔機能を保つ知識と技術、そして判断力が養われてきます。新たな歯科衛生士像を持った
明海大生がますます活躍する場を広げ、歯科界の発展に貢献してくれるものと期待しています。大学はモノを作ることはできませんが、ヒトを育むことができます。
50周年を機に、本学のスローガンとして「なりたいじぶん大学」を掲げました。学生が、思い描く〝未来の自分〞になれるようにサポートすることが大学の役割です。

ーー大学と同窓会の連携についてはいかがでしょう?
宮田 学生へのサポートに同窓会、卒業生の協力は欠かすことができません。コロナ禍を機に、世はリモートでも繋がりやすい時代となりました。これからはさらに幅広い領域で活躍される卒業生の方々とコミュニケーションをとりながら、大学が何を一緒にできるか、模索し、実践していきたいと考えています。多くの人が繋がることが、学生のサポートに繋がると考えています。〝なりたいじぶん〞を叶えた同窓生の皆様に後輩たちの〝なりたいじぶん〞を叶えるご協力をいただければ幸甚です。

PROFILE

学校法人 明海大学

理事長 宮田 淳 Jun Miyata

1969年生まれ。1992年3月慶應義塾大学商学部卒業、1997年3月東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。修士(経済学)。明海大学経済学部助教授、ホスピタリティ・ツーリズム学部教授。学校法人明海大学常務理事などを歴任。2014年3月、学校法人明海大学理事長就任。